大日本印刷が、オフライン専用の電子書籍端末「honto pocket」を発売するらしいと聞いてぶったまげた
大日本印刷が、いろんな作家の全集を一台の端末にぶち込んだ電子書籍端末を販売するんだそうです。
で、めちゃくちゃ高い。
そのうえ端末は完全にオフライン専用なので、新しい作品をダウンロードすることも出来ません。タイトルごとの専用機になるようなイメージです。
パッケージ名称 セットコンテンツ数 販売価格(税別)
アガサ・クリスティー全集 100冊 7万4800円
名探偵ポアロ・シリーズ 43冊 3万2800円
エラリイ・クイーン選集 27冊 1万9800円
ホームズ&ルパン 名作競演集 14冊 9800円
グイン・サーガ全集 上巻 80冊 3万9800円
あんまりSFっぽくなり端末ですが、固定ファンの多い、SF、ミステリ作家の全集なんかを出していく予定らしいです。
完全にぶったまげた
何にぶったまげたかって、いや、確かにこんな商品を作っちゃうなんて如何にも日本の大企業だあな、みたいなぶったまげもありますよ。でもそれ以上にぶったまげたのは、このクソみたいな電子書籍端末の話を聞いて、1年ほど前に自称読書家の教養オヤジと本及び本屋の話をしたときのことを思い出したからなんです。
教養オヤジ曰く、
・最近は情報の価値が下がってる
・今はくだらない本が多すぎる。本は、もっと選ばれた人だけ読めばいい。
・電子書籍はけしからん。温もりがない。
・本はただ読めれば良いってもんじゃない。
・装丁を眺めたり、本棚に飾ったりするのも楽しみの一つだ。
・仮に、いろんな作家の全集が全部1個にまとまってる電子書籍が出て、これは小林秀雄、これは吉本隆明みたいなのがあったら許せるかもしれない
そうで、今回出た「honto pocket」は、まさにあの教養オヤジが「こういう電子書籍があれば買ってもいい」みたいに言っていたのと全く同じものだったんですよ。僕は、「いやぁ、それは・・・、どうなんですかねェ・・・」としか返せなかったんですが、本当に言ってた通りの奴が出たんですから、まじでぶったまげましたよ。
一体全体、大日本印刷は何をどうやって今回の商品にたどり着いたのかわからないのですが、世の中にはそれこそ僕が会ったような教養オヤジが一定数いる可能性、実は結構高いのかも知れません。そういう人が実際に買ってくれるかどうかは別としても、もしかすると教養オヤジを集めたフォーカス・グループ・インタビュー的な調査をやった結果、「こういうのだったら欲しい」って意見が出てきたので商品化した、みたいな可能性もありそうです。
で、問題の大日本印刷によると、『honto pocket』発売にはこんな背景があったみたいです。
近年普及が進む電子書籍は、端末に大量のコンテンツを収納して手軽に持ち歩けるほか、文字を拡大する機能があるため年配の方にもメリットがあります。一方、ネット接続や会員登録、電子書籍の購入・ダウンロードなどの操作が必要で、紙の本のように気軽に読書を楽しみたい生活者にとっては利用しづらい面があります。そのため、特に年配の方からもっと簡単に利用したいという要望が多く寄せられています。
この状況に対して今回DNPは、複雑な操作が不要ですぐに読書できる紙の本と、持ち運びに便利な電子書籍の両方の特長を備えた、本好きの生活者のための“電子の本”『honto pocket』を提供します。
僕が出会った教養オヤジの意見とは方向性がちょっとズレている気もしますが、彼にしたって、心理的な抵抗感か技術的な不安なのかはわからないですが、要するにふつうの電子書籍を使おうとは思えず、紙の本と電子書籍の折衷を望んだという点で大日本印刷に寄せられた要望にも合致するところがあるのかも知れません。
「honto pocket」のターゲットは、年寄りの金持ちで尚且つ本の所有欲を満たしたくて仕方ない人たちなので、アガサ・クリスティーだったら著作権切れてるし英語版だったらタダで読めるんじゃないですか、青空文庫にも何個かありましたよ。みたいな感想はナンセンスです。
特にカッコいいガジェットではありませんが、やり口としては面白いです。これがどれくらい売れるもんなのか、1年後くらいに思い出したら調べてみようと思います。ちょっとだけ楽しみです。