牛乳瓶のフタ本位制経済の成立と崩壊までの全記録

公開日: : 最終更新日:2017/01/14 コラム

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僕は小学生の頃、牛乳瓶の蓋本位制の貨幣システムを発明しました。

牛乳瓶の蓋本位制経済というのは、簡単に言ってしまえば「牛乳瓶の蓋」を貨幣代わりに使えるエコシステムです。大昔の人が貝殻を通貨にしていた、という話を思い浮かべてみれば、大体のイメージが掴めるのではないかと思います。

ガキの戯れとは言え、そこはやっぱり貨幣制度。
今にして思えば、牛乳瓶の蓋本位制経済の繁栄と衰退までに起こった様々な事象は、資本主義やビジネスの本質を付いているような気がします。

また、世の中には貨幣制度を作ったことがある人はそうそういないはずなので、体験談をシェアしたいと思います。何かの参考にしてください。等身大の話なので、BitCoinやFintechの本を読むより参考にしやすい気がします。

牛乳瓶の蓋本位制経済前夜

【0日目-14日目】
僕は転校生でした。
小4で転校して新しい学校に入ったわけですが、クラスメイトたちからすれば、僕は新参者、よそ者だった訳です。

ですから当然、初めはクラスでの地位もそれなりに低かった。
ところが、そんな僕のことを優しく仲間に入れてくれたガキ大将のグループがありました。みんなで秘密基地を作ったり公園で鬼ごっこをしたりするグループで、確か「シノビ隊」みたいな名前だった気がします。

そんなシノビ隊に入ってしばらく経ったある日、僕は何を思ったか、唐突に牛乳瓶のフタを集め始めたんです。これはもう、特に理由があった訳じゃないんですが、とにかく集め始めました。

初めは自分の牛乳瓶からのフタだけを集めていたのですが、そのうちフタを集めること自体が楽しくなってきて、隣の席の女の子やクラスメイトなどからもフタをもらって集めるようになったんです。

すると、どうでしょう。
それまでフタに興味を示していなかった人たちの中からも、

「なんか転校生が牛乳瓶のフタを集めてるぞ」
「なんだかよくわからないけど、面白そうだな」

と、フタ集めに興味を抱く人がチラホラと現れたではありませんか。

フタを集めるようになったのは基本的に男子生徒だったのですが、しかし、この頃には既にクラスの女子生徒のほとんどは僕のためにフタを取っておいてくれるようになっていたので、残った男子生徒のためのフタはほとんどなくなっていました。

加熱するフタ熱

【15日目-20日目】
僕がクラスで生まれるほとんどのフタを独占しているせいで、新しくフタを集めたいと思った人たちのほとんどは満足にフタを集めることができなくなっていました。

そこで彼らは、僕に「フタを恵んでくれ」と頼んできた訳です。

僕だってせっかく集めたフタをタダでプレゼントするほどお人好しではないので、「荷物を持ってくれたらあげるよ」「遊戯王カードと交換しよう」などと言った条件でフタを譲るようになりました。

これが、単なる牛乳瓶のフタに貨幣的な価値が生まれた瞬間です。
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僕はこの期に及び、どうやら牛乳瓶のフタに、得体の知れない、訳の分からない価値が生まれ初めているらしいことに気が付きました。そこで僕は、牛乳瓶のフタから生まれる利権を守り、より強めるため、フタ供給源の拡大と牛乳瓶のフタ経済のさらなる普及を目指して動きだしたのです。

牛乳瓶のフタ本位制経済の黄金期

【20日目-40日目】

フタ経済圏の普及

僕の元に下級生のフタも集まってくるようになってきた辺りで、僕は同学年女子のフタはあまり厳しく取り立てないことにしました。

男子生徒がフタに価値を感じている以上、身近な女子のフタをある程度他の生徒が自由に集められるようにしておいた方が、少しずつでも確実にフタ集めの快感を学習させることができるのではないかと考えた訳です。

大切なのはみんなにフタの価値を認めてもらいつつも僕が1番たくさんフタを持っているという状況であって、全てのフタを僕が独占していればそれでOKという話ではないのです。

これによって、クラスの有力者のもとに牛乳瓶のフタが集まるようになり、彼らが牛乳瓶のフタ経済のインフルエンサーになってくれるようになってくれました。また、僕は圧倒的な資本力で有力者たちを支配下に置くことが出来るようになったのです。

これによってクラス内のヒエラルキーは一変、この頃、僕は「社長」と呼ばれるようになっていました。牛乳瓶のフタによってシノビ隊の実質的リーダーになったのです。

フタ供給源の拡大に次ぐ拡大

同学年の有力者たちが同学年の女子フタを集めることに躍起になっていた頃、僕は隣のクラスの女子生徒、そして3年生など下級生と、徐々に供給源を増やしていました。
教室に上がりこんで行ってはフタを巻き上げるのです。さながら、農民からコメを集めるサムライみたいな気分でした。
ところが、この頃には僕以外の男子生徒も当然フタ獲得のために個別に動くようになっていたので、のろのろしていると他の生徒にフタを取られてしまうというリスクが生まれていました。実際、何度か煮え湯を飲まされたこともあります。

そこで僕は、まず各クラスに僕のシノビとなってくれる女子生徒を用意して、その子に自分のクラスの女子フタを集めさせるという発明をしました。
これによって、僕は下級生の女子フタを確実に独占して集めることができるようになったのです。今にして思えば、このあたりが牛乳瓶のフタ経済のターニングポイントでした。

供給源の拡大に継ぐ拡大とフタ獲得の「仕組み化」を経て、最盛期には、僕の手元には1日100枚を超えるフタが入ってくるようになっていました。

シノビ隊の解体と新会社の創設

牛乳瓶のフタ経済が成立して以降、シノビ隊には隊長と社長が同時にいるような状況が続いていたのですが、シノビ隊の隊長も僕からフタを給料として受け取っていたため、実権は社長である僕の方にある状態でした。

牛乳瓶のフタ経済もいよいよ軌道に乗り、本格的に根付いてきた感があったので、僕はシノビ隊を解体し、新会社を設立することにしました。新会社の名前はブシーズです。

僕がブシーズの設立を宣言すると、シノビ隊の面々のほとんどはそのまま加盟してきました。
少年少女が仲良くあそぶ、牧歌的だったクラスはジェンダーとフタ資本主義の導入によってズタズタに分断されていったのです。

牛乳瓶のフタ本位制経済の衰退期

【40日目-55日目】

止まらないインフレ

フタ経済では、基本的に時間が経てば経つほどどんどんフタが溜まっていくため、ほうっておくと物凄い勢いでフタが増えていきます。

ところが実質的なフタの流通のほとんどは僕が一人で握っていたため、流通量そのものはある程度セーブすることが出来ていました。
仕事の見返りとして僕が給料として周りに支払ったフタと、各有力者に利権として認めていた同学年の女子フタ。市場に新しく入っていくるフタはこれくらいのもので、下級生から吸い上げた大量のフタのほとんどは僕の懐で眠っていました。

それでも日に日に膨張していくフタ流通量の影響は凄まじく、フタ1枚辺りの価値は否応なしに下落。完全なるインフレ状態を引き起こしてしまったのです。

これはまずい。なんとかしなけばということで、僕は各有力者に認めていた利権を没収。
彼らには代わりに、フタと交換できる専用の紙幣を渡すことにして、全てのフタが僕という中央銀行の元に集まるように制度を改革しました。当時そんな言葉は知らなかったですが、いわゆる兌換紙幣制度に移行することにしたのです。

これによって一旦はインフレの問題は収まりました。

が、新たな問題も生まれてしまいました。

各人かフタを獲得している実感の低下と、格差の完全なる固定化・露呈です。

兌換紙幣制度の失敗

兌換紙幣制度に移行してしばらくすると、社員たちのフタ経済へのモチベーションはあからさま下がりました。

これには大きく2つの理由があります。

①フタが、稼ぐモノから与えられるモノになってしまった
これまでの社員たちは、一応は各々の工夫次第でフタを稼ぐことができていました。
ところが、自由経済から統制経済に移行したことによって、フタの獲得量を増やすためには僕による人事査定を通す必要が出てきた訳です。

それまでの社員たちには、曲がりなりにも「自分たちの力でフタを稼いでいる」実感がありました。ところが、フタが稼ぐモノから与えられるモノになった途端、社員たちはやる気を失ったのです。結果、努力よりも媚びへつらいが横行するようになってしまい、経済は完全に腐敗してしまいました。

②格差の露呈
格差そのものはこれまでにも存在していましたが、フタを手に入れるために一旦僕を挟む必要が生まれて以降、両替をするために僕のもとにやってくる人たちは必ず、僕が信じられないほど大量のフタを所持していることを目にすることになってましいました。

これによって、社員たちの心の中にある種の虚しさが宿っていったのです。

そして、みんなが気付きはじめてしまいました。
牛乳瓶のフタには、実は大した価値がないということに。

革命の視聴覚室

牛乳瓶のフタの価値が暴落は止まりません。
なんとかしなければ。なんとかしなければ。

この頃の僕は、寝ても覚めても、牛乳瓶のフタ経済圏を維持・繁栄のための策を練っていました。
父に相談したところドラッカーを薦められたので、それも読もうとしました。難しくてわからなかったので読むのはやめました。

そんなある日の午後、ついに革命は勃発しました。
視聴覚室での授業の際、いつものようにブシーズの幹部たちに給与を渡そうとしたところ、

「そんなもの、いらないよ」

と言われてしまったのです。

「給与が足りないの? なら、これまでよりも増やすよ。いくら欲しいんだい?」

「そういう問題じゃないんだよ」

「そうだ、下級生のフタ獲得権も、一部ゆずるよ! これでどう?」

「そうじゃない。そうじゃないんだ」

「もう、飽きたんだよ」

ブシーズのNo2,No3が相次いで離反していった瞬間でした。
僕は頭が真っ白になる感覚に襲われ、No2は特に、シノビ隊時代から仲が良かった友人だったため、「ブルータス、お前もか!」みたいな気持ちになったのをよく覚えています。

その後のブシーズ

最高のフタ集め仲間だった幹部たちが去っていったあとには僕のやる気も急激に薄れていったのですが、幹部たちの豪遊を羨み、それでも実力不足でフタ集めが上手くいかないでいたクラスメイトが、僕に近寄ってきました。
しかし、彼の器ではフタを集めることまでは出来てもフタ経済を維持していくことは不可能だと判断。彼がフタを欲しがっているようだったので、すべてのフタを売りつけて彼を喜ばせてやりました。

結局、その後数日経った頃にはフタ経済などというモノは跡形もなく消え去りました。

ブシーズそのものも一旦解散したのですが、しばらく経った頃、去っていった元幹部たちとも合流し、公園でエアガンを遊ぶ武装ゲリラとして復活をとげました。

まとめ

牛乳瓶のフタ本位制経済には、経済や経営のエッセンスがたくさん詰まっているような気がします。

箇条書きするとしたら、

・ 価値がないモノでも、「欲しがってる人」がいれば価値が生まれる
・ 独占する
・ プラットフォーマーになる
・ “有力者”を味方にし、権威付けする
・ 媚びへつらいが蔓延っている組織は危ない
・ アメとムチを使い分ける
・ 仕組み化する
・ 努力で埋めようのない格差があることに気付くと、努力を辞めてしまう層がいる
・ “やりがい”を与える
・ 成功体験にしがみつかない

なんてところでしょうか。

長くなってしまいましたか、最後に、実は1つだけこの記事で大きな嘘をついていたことを謝りたいと思います。

実は、牛乳瓶のフタ本位制経済を作ったなんていう話は嘘なんです。

牛乳瓶はフタじゃなくて、キャップになっていたので、フタを集める感じではありませんでした。
本当のところ、僕らが集めていたのは牛乳瓶のビニールのピロピロの部分です。

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わかりますでしょうか。
この、牛乳をあける時にはがすピロピロの部分です。

文章にしたときにあまりにも伝わりづらいので、「牛乳瓶のフタ」を集めていたことにしました。
大変申し訳ありません。

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