学者とバンドマンは同じくらい世間ズレしているし、同じくらい競争率が高い

公開日: : 最終更新日:2015/03/30 コラム, 社会学

世の中には無数のバンドマンがいます。

そんな中、実際に売れ、音楽で飯を食っている人は極僅かしかいません。大手の事務所と契約をし、メジャーデビューした人ですらバイトをしながら食いつないでいるのが現状です。他人がどうこう言うことはありませんが、音楽をやるのは結構なイバラの道だと思います。

30過ぎでメジャーデビューを目指している人がいたとすれば、やっぱりその人は「普通」ではありません。世間からは小馬鹿にされます。「そろそろ落ち着いて、ちゃんと真面目に働けよ」って言われそうですよね。実際、世の中の30歳はほとんどが真面目に働いていますが、バンドマンの多くはフリーターです。

一方、そんなバンドマンたちとは対極とも言えるペクトルで世間からズレている人たちがいます。
そう。大学教授です。

大学教授になるまでには、最短でも4年間大学に通い、2年間は大学院の修士課程、その後3年間博士課程に在籍することになります。修士課程を終える頃には、若くても24歳。博士課程だと27歳です。

24歳とか27歳というのは、普通のメンタルをしている人ならそろそろ就職しなきゃ…と焦りだす頃です。ところが、いつまでもバンドを辞めないバンドマンや、いつまでも就職しない学生は、そんなことお構いなし。自分の道をどんどん進んで行くのです。

そこで、僕が立てた仮説がこちら。

①「バンドをやる」ということは、「真面目に勉強する」のと同じくらいの逸脱エネルギーを秘めているのではないか?
②ある世代の少年少女がバンドを始めて音楽で飯を食えるようになる確率は、大学生が大学の教授にまで上り詰める確率とほとんど同じなのではないか?

というものです。
以下、色々と検証してみました。

データ① 一流大学に進学する人の割合

上位大に入れる割合を計算した人がいるので、これはかんたんにわかります。

【上位国立】※河合塾の分類採用
・「難関10大学」(北海道大、東北大、東京大、東京工業大、一橋大、名古屋大、京都大、大阪大、神戸大、九州大)
・「準難関・地域拠点10大学」(筑波大、千葉大、横浜国立大、新潟大、金沢大、岡山大、広島大、熊本大、首都大東京、大阪市立大)
上位国公立合計:20校

【難関私立大学】
・早慶ランク(早稲田大・慶應義塾大・上智大・東京理科大・国際基督教大)
・MARCH(明治大・青山学院大・立教大・中央大・法政大)
・関関同立(関西大・関西学院大・同志社大・立命館大)
上位私立合計:14校

–≪全体に占める割合≫–
・難関国立10大学の募集人数:23,156人(全体の1.92%)
・準難関・地域拠点国公立10大学募集人数:19,169人(全体の1.59%)
・早慶ランク:23,097人(全体の1.92%)
・MARCH:29,915人(全体の2.49%)
・関関同立: 26,192人(2.18%)
  ※私立大は入学者等の人数
=合計:10.1%

MARCHや関関同立を東大京大に並べるのは少し違和感があるので除外します。
また、「広島大が凄い」とかも、僕は都民なのでよくわかりません。準難関大学は除外することにします。

そうなると、残るは「難関国立10大学」と「早慶」のみになり、これは合計3.84%となりました。

検証① 全国の少年少女がバンドを始める割合

次に、世の中にはバンドマンになる人がどれくらいいるのかを考えてみます。
これはデータがないので、概算するしかありません。

とりあえず、僕の通っていた高校の卒アルを引っ張りだして来て軽音部の集合写真に写っている人の人数を数えてみることにします。僕の高校では、総生徒数190人のうち、軽音部員は15人でした。割合にすると7.9%です。

ただし、僕の通っていた高校は日本有数の繁華街近くにある私服制の高校だったため、通常よりバンドを始める人の割合が高かった可能性があります。

実際、軽音部以外の場所でもバンドや弾き語り、アイドル活動・芸能活動などをやっていた子も多かったです。「アイドルをやってます」みたいな子なんて、5人もいました。これはちょっと多すぎると思うし、今回はあくまでも「バンド」の数を概算するのが目的なので、バンド以外の活動をしている人は計算に入れていません。

世の中には軽音部がない高校も多いですし、そういうところも含めて全国的な平均をとったら、おそらく全体としての軽音部員率は僕が通っていた高校の半分程度になるんじゃないでしょうか。およそ3.95%です。適当な概算ですが、おそらくこんなもんなんじゃないかなという感じがします。

よって、

とある世代の少年少女がバンドを始める割合は、その世代の少年少女が一流大学に進学する割合と同じ

ということになります。

これでひとまず、バンドをやるということが、真面目に勉強をするということと同じくらいの逸脱エネルギーを持っているのではないか。という僕の仮説が、まずひとつ裏付けられました。

ただし、すべての軽音部員がバンドで売れようと考えている訳ではありません。多くの軽音部員は、一流大学進学者のほとんどがそうであるのと同じように、大人になったら就職してまともに働いていこうと考えているはずです。ここで明らかになったのは、「バンドをやりたい」「勉強が好きだ」と考えている人の割合が両者同じくらいである。ということだけです。ですが、それらの嗜好は、30歳までバンドや勉強を続けるためには無くてはならない能力でもあります。

データ② 修士課程・博士課程に進む学生の割合

もう少しデータを見ておきましょう。

まずは文部科学省が作った、大学院教育の現状についてという資料です。

th_www_mext_go_jp_b_menu_shingi_chukyo_chukyo4_004_gijiroku___icsFiles_afieldfile_2010_08_03_1295700_1_2_pdf

このデータによると、修士過程に進む学生は全部で16万人、博士課程には7.3万人の学生がいるようです。
一般的に修士過程は2年制、博士課程は3年制なので、それぞれ年数で割っていきます。すると、一学年につき、修士が8万人博士は2.4万人いることがわかりました。これは平成21年のデータなので少し古いですが、そんなに大きく変わっているとも思えないので、このまま計算を進めます。

大学生は一学年につき60万人ほどいるので、
修士に進むのは13%,博士課程まで行くのは4%です。修士課程に進む人が案外多かったですが、これは理系だと院に行く人が多いためです。

ちなみに、冒頭では「一流大学」に進学する人の割合を計算しましたが、大学院は「一流大学の大学院」を計算しません。ふつう、大学院くらいになってくると、学生は学校が一流がどうかというより尊敬できる研究者・研究所に行きたいと思うようになるからです。

データ③ 博士課程を終えた人の進路

修士課程を終える頃には、若くても24歳。博士課程に至っては27歳になってしまいます。実際には途中で留学を挟んだりする人がかなりの数いるので、30歳を超えている人も少なくありません。特に博士課程の場合、30歳前後であるということもあり、周りはそろそろ会社の中堅どころになっている頃です。

この頃の博士たちは、将来についてどう考えているのでしょうか。そこらへんを明らかにするべく、ここでは彼らの進路を追ってみることにします。

先ほど挙げた文科省の資料には、各分野ごとに、こんな感じの進路図が掲載されていました。
th_www_mext_go_jp_b_menu_shingi_chukyo1_chukyo4_004_gijiroku___icsFiles_afieldfile_2010_08_03_1295700_1_2_pdf

これは人文科学系の人たちの進路図ですが、他分野もこれと同じ形式でデータが載ってます。
ここから、博士課程を終了した人のことを考えてみます。

人文科学系の博士課程を終了した1400人のうち、
5%(100人)が一般企業へ就職、同じく5%が教員になっています。尚、ここでいう「教員」とは小中高の先生などのことを指しているので、大学院に行かないとなれないものではありません。

大学院に行かないとなれないのは、大学教員の方です。こちらは216人。ポスドクが160人です。博士課程を終えてもまだ学び足りない人もかなりの程度いて、留学と進学をする人が合計40人います。

今挙げた連中は、まあ、結構な勝ち組です。そんなに問題はないでしょう。

問題なのは、「行方不明者」と「無職者」がメチャクチャ多いことです。

1400人中700人、2人に1人が無職or行方不明って、メチャクチャじゃないですか。これ。

全体として見ると、文系では45%が無職か行方不明。
理系の人たちは文系よりは行方不明率が低いですが、それでも20%程度が行方不明になっています。これは、そもそも理系の人は「就職のため」に院へ行く割合が多いということを考えると、驚異的な割合です。しかもこれ、理系は「医者」も含めての数字ですからね。

バンドマンは30を過ぎても結構な割合で定職に就いていません。
同じように、30まで学校に通った人もかなりの数が無職になっているのです。

データを見ているうちに、仮説①の、「バンドをやる」ということは、「真面目に勉強する」のと同じくらいの逸脱エネルギーを秘めているのではないか?を更に強化するデータが見つかってしまいました。幸先が良いですね。

データ④ 大学生が大学教授になれる割合

このサイトによると、大学教員のうち、教授以下の下っ端が約10万、教授が6.8万人いるようです。学長・副学長クラスへ出世できる人は更に少なく、合わせて1400人程度。

大学教授は大学教員のうち37%。学長クラスは0.8%です。
大学教授は若くとも35歳、最高で70歳なので、単純に計算すると大学教授は1学年ごとに1900人いるということになります。大学の教員になれれば、結構な確率で大学教授にはなれるようです。ただしこれは、近年になって新設された大学が多いからでしょう。今後は少子化に寄って潰れる大学も出てくるでしょうから、今の若い大学教員が将来教授になれる確率はわかりません。

また、元新聞記者や映画監督なんかが雇われて教員をやるケースもあります。しかし、そういう人も元々は大学生だった可能性が高いので、今回の記事には関係ありません。

とりあえずここでは、現在の大学教授が学生だった頃のデータを元に計算してみることにします。
現在、大学教授の平均年齢は57歳ですから、彼らが生まれたのは1957年。


参考:統計からトレンドを読む -大学進学率 

こちらの図によると、1957年生まれの大学進学者は約40万人いたことになり、これを1学年1900人の法則で計算すると、57年生まれ大学進学者が大学教授になった確率は0.4%です。現在の学生はそれよりもう少し割合が低くなり、0.3%です。

検証② 音楽で飯を食える確率

音楽で飯を食うとなると、真っ先に思いつくのがバンドで売れることですが、一口に「売れる」と言っても色々な次元があります。

①ビートルズ級
②ローリング・ストーンズ級
③ザ・フー級
④キンクス級

このように、細かく見ていけばこんな感じの分類もできますが、これだと主観も入るし面倒くさいです。どこまで掘り下げていけばいいかもよくわかりません。もう少し大雑把に行きましょう。また、今回はあくまでも「売れる確率」を求めるだけなので、レジェンド級の連中のことは考えません。

あるバンドが順調に成長していくとすると、おそらく以下のような段階を踏むことになります。

①ノルマを払ってライブに出る段階(赤字) 
②ノルマを払ってライブに出る段階(若干黒字)
③ギャラをもらってライブに出る段階
④メジャーデビューする段階
⑤メジャーで成功する段階
⑥伝説的なバンドと呼ばれる段階

ほとんどのバンドは①の段階から先に進むことができません。
友達が多ければ②に行くことも出来るかも知れませんが、実力がなければ③の段階に進むことは不可能です。

③や④の段階でも音楽で飯を食えるレベルにはありませんが、ライブハウスによく行くような人たちには「売れてるバンド」だと認識され始めるころです。ところが、このレベルの人たちは、企画によってはギャラが貰えたりノルマがあったりもするし、対バンが悪かったらノルマを払えないこともあるかも知れません。集客が不安定なのです。

音楽だけで飯を食えるようになるのは、⑤からです。とりあえず、音楽だけで年収300万円ほど稼げていれば⑤の段階をクリアしていることにしましょう。

「メジャーで成功したバンド」の数についてはデータがないので推測するしかありませんが、ヒントになるデータならあります。

年収10万円未満の最下層に20,000人がいる世界です。
そのうち、年収300万円以上をもらえる人が年間20000人のうちの200人にも満たない世界だそうです。
ちなみにその300万以上稼げるミュージシャンの中でも食べていけるようになるのはそのうちの数パーセントとなりまたそれが永続的に年収をもらえるのは20000人のうち2、3人となります。

ミュージシャンの平均年収

このデータではスタジオミュージシャンやバッグバンドをやっている人の収入まで合算しているので、「バンドで食っている」という感じはそれほどありませんが、少なくても音楽で飯を食っています。そんな人が0.1%ほどいるということです。加えて、自分たちのバンドで稼げている人も0.1〜2%くらいはいるはずです。

総じて、バンドを始めた結果音楽で飯を食えるようになった人は全体の0.2〜0.3%ほどいるのではないでしょうか。

検証③ 音楽で飯を食っている人と教授の数を比較する

僕の仮説②は、ある世代の少年少女がバンドを始めてメジャーデビューする確率は、大学生が大学の教授にまで上り詰める確率とほとんど同じなのではないか?というものでした。
ですからここでは、 教授になる大学生の割合 と メジャーで成功するバンドの割合を比べることにします。

尚、バンド6段階成長理論を学生に当てはめるとこんな感じになります。

①一流大学に入学する人
②大学院の修士課程に進む人
③大学院の博士課程に進む人
④大学の教員になる人
⑤教授になる人
⑥大学の学部長などになる人

ちなみに僕は、JAGATARAとか頭脳警察を「伝説的なバンド」だと思ってるのですが、一般的にはそれほど知名度がありません。ですから、「伝説的なバンド」には知名度はそれほど関係ありません。たいていの人は大学の学部長の名前なんて知らないでしょう。それと同じです。

大学の世界には年功序列的な要素があるので、年齢が上がると共に出世できる可能性が上がります。それでも、1学年に60万人いる大学生のうち、大学教授になるのは0.3%。バンドで飯を食っている人も0.2〜0.3%なので、確率としては同じくらいになりました。

よって、仮説②もある程度裏付けることが出来たのではないかと思います。

おわりに

初めに僕がたてた仮説、
①「バンドをやる」ということは、「真面目に勉強する」のと同じくらいの逸脱エネルギーを秘めているのではないか?
②ある世代の少年少女がバンドを始めて音楽で飯を食えるようになる確率は、大学生が大学の教授にまで上り詰める確率とほとんど同じなのではないか?

について検証していきました。

①については、文句なく証明できたように思います。
schoolの語源がスコラ=暇であることからも解る通り、学者先生には伝統的にニート気質があり、社会に出てバリバリ働くという世界とは価値観が合いません。ペクトルこそ違いますが、学者もバンドマンも、それぞれ「今までの常識を壊す」仕事をしている訳です。「好きなことをやって食っていきたい」と考えている点でも同じようなもので、精神性が近いような気がします。

ですが、それだけに②の立証がかなり強引だったのが悔やまれます。もっときちんとしたデータが欲しかったです。まあ、統計学なんて元々そんなもんなのかも知れません。

「博士って実は相当ヤバくね?」という直感を元に書いた記事なのですが、実際に博士はヤバイし、ヤバイと思ってる人もたくさんいるようですね。とりあえず、こんな本を見つけたので読んでみようと思います。

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