NASAのオリオン計画を聞いたので、旭太郎の「火星探検」を読みました。
NASAが火星に人類を送り込もうと頑張っているみたいですね。
アメリカの次世代宇宙船「オライオン」(オリオン)が5日(日本時間。以下同)、最初の試験飛行を順調に完了した。同日21時4分に米・フロリダ州ケープカナベラル空軍基地から打ち上げられたオライオンは、地球周回2周目で高度5800kmに到達した。有人用に開発された宇宙船としては、アポロ計画以来最も地球から遠ざかった記録となる。打ち上げから4時間半後の6日1時半ごろに大気圏に再突入、パラシュートを展開してカリフォルニア州沖に着水した。回収された船体はまずサンディエゴ海軍基地に運ばれ、その後フロリダ州ケネディ宇宙センターで今後の開発のための分析が行われるほか、打ち上げ失敗時の緊急脱出システムのテストに再利用される。
http://www.astroarts.co.jp/news/2014/12/08orion/index-j.shtml
4日の打ち上げは延期されましたが、どうやら上手く行ったみたいです。近頃は火星に人を送り込む計画を立てているテレビ番組もあるみたいですし、どうも火星探検がブームになってるようです。
火星とSF
ところで、戦前の日本には「火星探検」という、ものすごい漫画があったのをご存知でしょうか。僕はたままま古本屋で見つけたのですが、これは凄いまんがですよ。
手塚治虫はこの漫画に感動して漫画家になり、小松右京は小説家になったそうです。日本SF界に多大な貢献をした2人が感動した作品だけあって、今読んでも全く色褪せることのない魅力がありました。
絵柄もかわいいし、セリフもかわいい。どいつもこいつもかわいくて、ものすごくやさしい気持ちになれます。もちろんSFとしても凄い。センスが良い。
火星探検の凄さ
今の子どもだったらひょっとするとゴキブリを思い浮かべるかも知れませんが、昔の人は火星といえばタコみたいな火星人をイメージしました。巨匠H.Gウェルズの宇宙戦争がきっかけです。
それ以前にも「火星には運河があるぞ」とか「火星には火星人がいるかも知れない」みたいな説が、少なくとも19世紀の終わり頃にはあったようで、結構まじめに研究されて来ました。
ところが、20世紀の後半には人類の目が宇宙に手が届き、火星に人類がいないことが証明されました。お陰で、昔ながらの火星人が出てくる作品は廃れたような印象があります。マーズアタックなんかはコメディ映画ですし、火星人なんているわけないだろっていうのが現代人の共通見解だと思います。
「火星には文明があるのだろうか」「火星には生き物があるのだろうか」
現在の科学では調べようと思えば調べられることでも、昔の人は望遠鏡を覗いたり鏡を使って光を送ったりするくらいしか出来ませんでした。
火星探検の主人公のお父さんは天文学者なのですが、研究所では「火星人は絶対にいる派」の友人と「いない派」のお父さんがヒゲを引っ張りあってけんかします。また、別のシーンでは、お父さんと主人公がこんなやり取りをしていました。
「ほんとうのことを知ることぢゃ。火星に人間がむりに居るやうに考へてはいかん」
「さうですね。人間がゐるかゐないか研究すればいいんですね」
「そうぢゃ」
お父さんは、「火星の運河にしたって、地球から望遠鏡を覗いて見たんじゃ、単なるクレーターがつながって線に見えてしまっているだけなのかも知れないのぢゃ」ということを主張し、どこまでも懐疑的、科学的です。
こども向けまんがだからといって単なるハチャメチャな展開をするだけではなく、しっかりとした科学的な論理に裏付けして作品世界をまとめるバランス感覚。牧歌的かつ科学的、それでいて夢を忘れない物語。これぞまさしく子ども向けまんがの名作です。子どもが出来たら絶対読ませます。もちろん大人が読んでも面白いです。おすすめです。